こんにちは、統一翻訳ライターの津山です。今回は、東南アジアの言語についてご紹介したいと思います。
皆様は、世界で使用される言語のうち約3割が東南アジアに集中している、ということをご存じですか?
東南アジアは、6億人を超える人口と、年齢層の若さで、現在経済成長がめざましく、世界中の企業がビジネスの展開先として注目している地域です。そんな東南アジアの言語は、ヨーロッパ、中国、インド等、様々な地域の影響を受けながら、独自の発展を遂げています。
また、実は東南アジア諸国の文字には、興味深い現象が見られます。ユーラシア大陸に位置するタイやカンボジア等は、独自の文字を持つのに対し、島嶼部に位置するフィリピンやインドネシア等は、アルファベット表記を使用しています。
東南アジアの言語は、それぞれが異なる特徴を持つ、非常にユニークな言語であり、企業が現地でビジネスを行う際には、英語だけでは不十分な場合もあります。ビジネスを展開する前に、各国の言語の特徴を少しでも知っておくと、コミュニケーションが円滑に進められ、予想以上の成果が得られるビジネスチャンスも増えるでしょう。
そこで今回は、東南アジア諸国の言語について、それぞれの概要や特徴を、東南アジア地域の言語の翻訳実績が豊富な弊社・統一翻訳から、ご紹介させていただきます。
東南アジア諸国の言語と基本の挨拶
東南アジアとは、インドネシア、カンボジア、シンガポール、タイ、フィリピン、ブルネイ、ベトナム、マレーシア、ミャンマー、ラオス、のASEAN(東南アジア諸国連合)加盟10カ国と、東ティモールで構成される地域を指します。
東南アジアには、世界の約7,000種類を超える言語のうち、3割近くにあたる約2,000種類の言語が存在します。中でも、インドネシアでは、地方語も含めると、たった一国で約700種類以上の言語が使用されています。
東南アジア諸国は、ヨーロッパや中国の影響を受け、現在でも、複数の公用語を持つ国が少なくありません。東南アジア諸国の公用語と、覚えておくと便利な基本の挨拶は、以下の通りです:
国・地域 | 公用語・言語 | 公用語の挨拶(こんにちは) |
---|---|---|
インドネシア | インドネシア語 | Selamat siang スラマット シアン |
マレーシア | マレー語(公用語)、中国語、タミール語、英語 | Selamat petang スラマット プタン |
フィリピン | フィリピン語(公用語)、英語 | Magandang hapon po マガンダン ハポン ポ |
シンガポール | 英語(公用語)、中国語、マレー語、タミール語 | Hello ハロー |
ブルネイ | マレー語(公用語)、英語 | Selamat petang スラマット プタン |
東ティモール | テトゥン語(公用語)、ポルトガル語 | Botarde ボタルデ |
タイ | タイ語 | สวัสดีครับ(男性)サワディ クラップ |
ミャンマー | ミャンマー語 | မင်္ဂလာပါ ミンガラーパー |
ベトナム | ベトナム語 | Chào anh(同年の男性に)チャオ アイン |
カンボジア | クメール語 | ជំរាបសួរ チュムリァプ スォー |
ラオス | ラオ語 | ສະບາຍດີ サバーイディー |
(ASEAN PEDIA – アセアンペディア ASEANまるわかり、JICA テトゥン語事前学習資料を参考に作成)
上記の表をご覧いただくと、島嶼部に位置するインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、ブルネイ、東ティモールは、独自の文字を持たず、ローマ字を使用していることが、お分かりいただけるかと思います。
東南アジア地域以外のアジア言語に関しては、以下の記事でご紹介していますので、併せてご参考になさってください。
コミュニケーションに役立つ!東南アジアの主な5つの言語の特徴
今回は、東南アジア諸国でも特に人口が多く、日本企業も積極的に進出している、5つの国(インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイ、マレーシア)の言語の特徴について、ご紹介します。
その1. インドネシア語
インドネシア語は、世界の1億6千人以上が使用する、東南アジアの言語の中では、最も話者が多い言語です。
実は、インドネシア語は、日本人にとっても、比較的学びやすい言語と言われています。その主な理由は、以下の3点です:
- 単語のアクセントで意味が変わることがない(声調のルールがない)
- アルファベット表記が用いられ、ほとんどの単語がローマ字読みで対応可能
- 敬語や男性名詞/女性名詞の区別がない、複数名詞の構造が簡単
上記3について少し補足すると、インドネシア語は、単語を繰り返すことで複数名詞を表現します。そのため、複雑な接尾語や接頭語の変化は、ほとんどありません。
インドネシア語の更に詳しい特徴は、以下の記事でご紹介していますので、併せてご参考になさってください。
その2. フィリピン語
フィリピン語は、世界に9千万人以上の話者が存在する、東南アジアで二番目に話者が多い言語です。フィリピン語も、アルファベット表記が用いられ、ローマ字読みで対応可能なため、日本人が学びやすい言語の一つです。
ただし、フィリピン語には、日本人にとって少し難しく感じられる以下の特徴があります:
- 主な語順がV+S+O型で動詞が先頭にくる(日本語はS+V+O型が中心)
- 動詞の変化が複雑
フィリピン語は元の動詞(語根)が同じでも、時制や接頭語・接尾語が付くことで、様々な形に変化します。以下に一例を紹介します。
フィリピン語を学ぶ際は、元の動詞(語幹)の形と、意味をしっかり覚えておくことが、欠かせません。
その3. ベトナム語
ベトナム語は、世界に7千万人以上の話者が存在し、チュ・クォック・グーと呼ばれるアルファベット表記が用いられます。
しかし、英語と異なり、チュ・クォック・グーにおいてはF、J、W、Zの文字は使用されず、代わりにĐ(デー)や、Ă(ア)等の符号がついた6種類の特殊文字が加わっています。
ベトナム語は、6種類の声調を使い分ける上、人称代名詞(人や物を指す代名詞)が相手の立場や性別により変わる、といった特徴を持つため、日本人には、少し難しく感じられるかもしれません。
更に詳しいベトナム語の特徴は、以下の記事で紹介していますので、ご参考になさってください。
その4. タイ語
タイ語は、世界に6千万人以上の話者が存在します。タイ国民の中には、イサーン語、チェンマイ語等の方言を話す方もおられますが、ほとんどの方はタイ語で意思疎通ができます。
タイ語は、タイ文字と呼ばれる独自の表音文字(音韻だけを表す文字)を使用する上、5種類の声調を使い分けねばならないため、日本人には少しハードルが高く感じられるかもしれません。
しかし、タイ文字は、ひらがなと同様に、読めれば発音ができます。またタイ語は、文法面でも、基本的な語順が英語とほぼ同じであるので、英語を学ばれた方にとっては、比較的覚えやすい言語です。
タイ語をビジネスで使用なさる際にご注意いただきたい点は、以下の記事で詳しく紹介しています。
その5. マレー語
マレー語は、世界に2千万人以上の話者が存在します。マレー語は、アルファベット表記を使用し、ほとんどがローマ字読みで対応できる上、複雑な声調も存在しないため、日本人にとっては覚えやすい言語の一つです。
マレー語はインドネシア語との共通点が多く、マレーシア以外のシンガポール、ブルネイ、といった国でも一般的に使用されています。
ただし、日本人が戸惑いやすいマレー語の特徴として、名詞+修飾語(名詞、形容詞等)表記など、一部の語順が日本語と逆になる点が挙げられます。以下に一例をご紹介します。
マレー語の文章は、S(主語)+V(動詞)の順で表現されますが、語順が日本語と逆になる場合も多く、注意が必要です。
例)「私の名前は山田恵子です」=Nama saya Keiko Yamada(語順:名前 私 恵子 山田)
東南アジアの言語を翻訳する際に注意すべき点
最後に、今後、東南アジアへのビジネス進出をお考えの方に向け、翻訳の際にご注意いただきたい点を、弊社の東南アジア言語における翻訳経験を元に、少しだけご紹介いたします。
その1. 日常的に使用される単語やイディオム
インドネシア語は、フォーマルな言葉とスラングが混在して使用される言語であることから、翻訳を正確に行うためには、KBBIと呼ばれるインドネシア政府公式の言語辞典の使用が欠かせません。
その2. 各国で異なる表記のルールや省略
タイ語では年代表記を仏暦で表記するのが一般的です。西暦「2023(年)」は「2566(年)」と表記されます。「西暦+ 543 =タイ暦(仏暦)」と覚えておくと便利です。
インドネシア語の場合、複数形を表現する際は、必ず間に「-(ハイフン)」を入れます。その他、数字におけるピリオド「.」とカンマ「,」も、日本とは逆のルールで使用されます。
また、ベトナム語では、SNSの流行に伴い、入力の手間を省くため、声調符号や特殊文字を使用しない表記の利用が、若者の間で増えています。しかし、これらの省略された表記に対し機械翻訳を使用すると、全く異なる意味に翻訳されるため、ご注意ください。
東南アジアの言語の機械翻訳技術は、まだ研究の過渡期であり、上記の様に細かい点に配慮した翻訳が難しいことから、実際のビジネスで使用なさることは、お勧めできません。
高品質な翻訳をお求めの際には、世界に1万人以上のネイティブ翻訳者を擁し、東南アジアの翻訳実績が豊富な、アジア最大の翻訳会社である統一翻訳まで、ぜひ一度ご連絡ください。
いかがでしたか?今回は、東南アジアの言語についてお届けしました。この記事が、東南アジアに進出なさる方々の助けになれば幸いです!