こんにちは、統一翻訳ライターの津山です。皆様は、現在の日本の証券市場における海外投資家の投資比率をご存じでしょうか?2022年に公表された証券会社のレポートによると、既に6割にまで達しています。
その際、海外投資家にとって重要な情報源となるのが、英文財務諸表です。しかし残念ながら、東京証券取引所(東証)の調査によると、上場企業の英文情報開示は、最も多い決算短信でも、45%(2022年7月時点)にとどまっています。
日本国内では、2022年時点で、海外に連結子会社を有する大企業に対してのみ、英文財務諸表の作成が義務付けられていますが、弊社・統一翻訳が本社を構える台湾では、2023年以降、上場会社の英文財務諸表の作成が義務化されます。
今後は、海外投資家が増え続ける日本国内でも、英文財務諸表の作成の動きは、更に強まると考えられます。なぜなら、英文の財務諸表がなければ、海外投資家を呼び込めないからです。
東証の調査では、英文財務諸表を作成していない場合、約8割の海外投資家が「投資対象としない」と回答しています。つまり、未だ、英文財務諸表を作成していない企業は、早めに着手しないと、将来の資金調達に影響が出るリスクがあるのです。
そこで今回は、600社を超える上場企業の財務諸表翻訳実績を誇る弊社が、財務諸表翻訳をご検討中の企業様に向け、財務諸表の翻訳にあたり注意すべき点や、外注する際の手順、翻訳会社選定のポイントを、まとめてご紹介します。
財務諸表の翻訳にあたり注意すべき3つのポイント
財務諸表の翻訳を始める際、まず企業の方にご注意いただきたい、3つのポイントがあります。それは、用語集等のご準備、会計基準に則した表記の確認、法令名の表記の確認です。
その1. 用語集やスタイルガイドのご準備
財務諸表の表現を統一する上で欠かせないのが、用語集や、スタイルガイドの作成です。
用語集とは | 翻訳対象となる業界の「専門用語」や「クライアント指定用語」等を、どのように翻訳すべきかまとめた資料 |
スタイルガイドとは | 文章上の表現や、数値、記号表記等に関するルールをまとめたガイドライン |
企業の財務諸表は、会社法や金融商品取引法に基づいて、毎年作成されます。投資家が複数年に渡る財務諸表を、比較検討できるよう、業績や事業概要に関しては、あえて、前回資料の表記・形式を踏襲するケースが多く見られます。
財務諸表の翻訳の際、翻訳者がころころ変わってしまうと、同じ内容にもかかわらず、訳文のスタイルが変わってしまうというリスクがあり、表記の揺らぎを減らし、財務諸表の翻訳の品質を上げるために、用語集は欠かせません。
<複数の訳出が考えられる用語の例>
- 株主総会:meeting of shareholders または shareholders’ meeting
- 個別財務諸表: individual financial statements または standalone financial statements
また、財務諸表翻訳のスタイルガイドでは、以下の3点について定めておくことをお勧めします。
- 通貨や数値の表記
- 会計年度や日付の表記
- 各項目の番号の振り方
用語集やスタイルガイドの具体的な作成手順は、以下の記事をご参考になさってください。
その2. 会計基準に則した表記方法の確認
財務諸表の翻訳は、ただ原文を直訳すればいい、というわけではありません。
例えば、海外連結子会社を有する日本の上場企業は、国際会計基準(IFRS)が指定する英文表記を用いた財務諸表の作成が必須です。
同じ英語でも、米国の会計基準(US-GAAP)と、IFRSでは、異なる表現を使用するケースがありますので、十分ご注意ください。
日本語 | IFRS | US-GAAP |
---|---|---|
貸借対照表 | Statement of financial position | Balance sheet |
損益計算書 | Statement of profit or loss | Income Statement |
もし今後、英文財務諸表の作成をお考えの企業様であれば、証券取引所グループ(JPX)が公開している、英文テンプレートや対訳表も活用することができます。
詳しくは、以下のリンクをご参考ください。
英文財務諸表の参考テンプレート:JPX英文開示GATE
その3. 法令の翻訳表記の確認
財務諸表作成に関連する法令の内容は、毎年のように改定が入ります。同時に、法令名の翻訳表記自体も、更新されるケースがあります。
例えば「会社法」の場合、以前の翻訳表記は Corporate Law でしたが、現在では Companies Act が正しい表記です。このような変更は、財務諸表の専門家でも、意外と気がつかないことがあります。
財務諸表の翻訳の際は、最新の翻訳表記が掲載されている「日本法令外国語訳データベースシステム」をご確認ください。
機械翻訳では対応が困難?財務諸表の間違いやすい翻訳事例
財務諸表の翻訳をお考えになる場合、スピードと費用の面から、機械翻訳のご利用をお考えになる企業様もいらっしゃるかと思います。
しかし、専門用語を多く含む財務諸表のような資料は、プロの翻訳者であっても、会計に関する知見がないと、誤訳につながります。以下はその一例です。
<財務諸表で表記を間違いやすい事例>
関係会社投資:
◯ Investments in associates
✖️ Investments in affiliated companies
(※)関連会社は「Affiliates」と訳せますが、財務諸表では「Investments in associates」の表記を用います。
機械翻訳は会計特有の用語に関しては進化の過渡期であり、上記のような用語への対応は、未だ対応できるレベルではありません。
財務諸表は、海外投資家が企業を評価する上で重要な資料ですので、翻訳費用だけに捉われず、まずは、プロの翻訳会社にご相談いただくことをお勧めいたします。
財務諸表翻訳を外注する際の手続きと選定のポイント
最後に、財務諸表の翻訳を外注したいとお考えの企業様に向け、実際の手続きや、翻訳会社に外注なさる際の選定のポイントを3点、ご紹介します。
財務諸表を外注する際の手続き
財務諸表をプロの翻訳会社に外注する際は、以下の流れに沿って手続きを行います。
契約締結の際、企業の皆様に特にご注意いただきたいのが、機密保持に関する取り決めです。公開前の財務諸表には、インサイダー取引につながる機密情報が含まれているため、絶対に情報漏洩があってはなりません。
外注先との契約時には、契約書に機密保持条項を盛り込むか、機密保持契約(NDA)を締結なさることをお勧めします。
翻訳会社選定のポイント3点
高品質な財務諸表翻訳をお求めの場合は、翻訳会社に問い合わせなさる際、以下3点に関してご確認いただくことをお勧めします。
- 会計分野に精通した翻訳者を擁している
- 財務諸表や開示文書の翻訳に関する実績が豊富である
- 翻訳サービスの国際規格認証ISO17100を取得している
財務諸表は、原稿の大部分が専門用語であり、会計基準や法令も頻繁に改定されます。
正確で読みやすい、質の高い翻訳をお求めであれば、会計分野に精通する翻訳者が在籍し、かつ、会計分野における翻訳実績が豊富な翻訳会社を選択することが重要です。
また、財務諸表の翻訳にあたっては、翻訳会社側も、厳重な機密管理や、仕様書の遵守、納期の厳守等が欠かせません。
これらを徹底しているか見分けるために、翻訳会社が、質の高い翻訳プロセスを確立している翻訳会社のみに与えられる国際規格認証「ISO17100」を取得しているか、ご確認いただくことをお勧めします。
ISO17100に関する詳しい基準は、以下の記事をご参考になさってください。
いかがでしたか?今回は、近年ニーズが高まっている、財務諸表の翻訳のポイントについて、ご紹介しました。
最後に少しだけ、弊社の財務諸表翻訳に関する実績をご紹介させていただきます。
弊社・統一翻訳では、財務・会計分野に精通した翻訳者による高品質な財務諸表翻訳を、IT、化学、食品加工等、世界600社以上の上場企業にご提供してまいりました。
弊社は翻訳サービスの国際規格認証であるISO17100も取得済みですので、徹底した品質管理に基づき、質の高い財務諸表翻訳のご提供を、お約束いたします。
現在は、事前に翻訳品質を確かめていただくため、原文300字の無料トライアルを実施しております。財務諸表の翻訳を、プロにご依頼なさりたい企業様がおられましたら、是非こちらからご連絡ください!