こんにちは、統一翻訳のライター佐藤です!

近年 Stay home の影響でゲーム会社からの日本語→中国語の翻訳が増えています。世界的に見てもアジアはゲーム市場が一番大きく、その中でも中国のゲーム市場は群を抜いています。

また、侮ってはいけないのが台湾のゲーム市場です。台湾の人口は日本の¼ の人口2300万人であるにも関わらず2018年の時点で世界15位の市場規模でした (日本は同年3位)。

参考:Taiwan Games Market 2018

つまり、日本語のゲームを中国語に翻訳するだけで、世界で1位の市場と世界で15位の市場にアプローチできます。また、ゲームに限らずその他の商品やサービスも中国語に翻訳すれば中国と台湾、そして香港への展開が可能です。

このように非常に魅力的な日中翻訳ですがいくつか落とし穴があります。一例を上げると地域差です。例えば台湾では地下鉄を「捷運」と呼びますが、中国では「地铁」と呼びます。

このブログでは設立55年、日中翻訳のプロ中のプロである統一翻訳が日中翻訳の注意点を7つ厳選してお伝えします。

これから日中翻訳を考えているゲーム会社の方は特に必見です!

注意点その1. 中国語は孤立語である

まず中国語は孤立語であるという点に注意してください。孤立語は、語に語形変化がなく,文法的機能が語順によって表される言語です。よって、語順によって、名詞や動詞が決定されます。

例えば、以下をご覧ください:

日本語では、「私は」という言葉に含まれる助詞「は」が、「私」が主語であることを表し、「地下鉄に」中の助詞「に」が「地下鉄」が場所であることを表します。

  • 中国語:我坐捷運
  • 日本語:私は地下鉄に乗る

これにより誰がどこに行くかという関係が構築されています。

そのため、仮に上記の日本語の語順を「地下鉄に私は乗る」「地下鉄に乗る私は」と置き換えても、助詞や主語が関係性を示しているため、聞き手に意味が通じます。

一方、上記の中国語は関係性を表す語がなく、語順を変えると意味が全く通じません。「捷運坐我」、「坐捷運我」などのように語順を変えると、意味が全く通じません。

これが孤立語の特徴です。孤立語では語順が重要です。

残念ながら機械翻訳ツールはこの孤立語の特徴をきちんと掴めない場合が多く、語順が適当になって意味が通じないことが多いので注意が必要です。

注意点その2. 慣用語の存在

慣用語の存在

次に慣用語の注意点についてお話をします。中国語の中には日本語に直訳したら全く異なる意味になる慣用語がいくつか存在します。

例えば、「摸魚」という単語があります。「摸」は(触る)という意味で、「魚」は(魚)ですです。つまり直訳すると「魚を触る」という意味ですが、「摸魚」は日本語で「サボる」という意味です。

日本語も「サボる」の類語として、「油を売る」という慣用句があります。「油を売る」を中国語に直訳すると「賣油」になります。

しかし当然ながら、「賣油」と中国語に訳してもなんの意味かわかりません。

日本語と中国語では異なる慣用句が存在します。機械翻訳ツールは AI 技術を使って目覚ましい速さでこういった慣用句を学習していますが、単体で訳すだけならまだしも、文中に慣用句が使用されている場合、誤訳が多くなります。

注意点その3. 漢字の違い

日中漢字の違い

日本語と中国語には同じ意味の漢字がいくつも存在します。初めて台湾や中国に行っても看板やテキストの漢字がなんとなく理解できるという経験をした事がある人は多いと思います。

しかし、中国語や日本語の単語の中には、意味が異なる漢字がいくつもあります。例えば日本語の「勉強」と、中国語の「勉強」は意味が全く異なります。中国語は「無理をする」という意味です。このような例がたくさんあります。

注意点その4. 外来語の対応

「滑鼠」は直訳的には「滑るネズミ」

日本語の外来語の対応はものすごく便利だと思います。基本的に聞こえた通りにカタカナにするだけです。

例えば英語の 「opinion」は「オピニオン」と訳せます。

中国語では外来語を訳す時、基本的に二つの方法があります。一つは「音訳」でもう一つが「意訳」です。

音訳は日本語における外来語の翻訳と同じ仕組みです。耳で聞こえたままに、それに似た発音の単語を当てる方法です。

英語の「cool」という単語は「酷」(ku) と訳します。cool と ku は発音が似ていますよね。

通常音訳は人の名前や固有名詞に用いられます。

少し厄介なのが意訳です。意訳とは簡単に言うと単語の意味をきちんと汲み取って訳すことです。

例えばパソコン周辺機器の「マウス」の例をご紹介します。中国語でパソコン機器の「マウス」は「滑鼠」と訳します。「滑鼠」は直訳的には「滑るネズミ」という意味です。

マウスを中国語でそのまま「ネズミ」と訳すと、動物のマウスと混同してしまいます。だからといってマウスは人名や固有名詞ではないため、音訳は不適切です。そこで、デスクの上を滑る「マウス」としての機能と、動物の「マウス」を掛け合わせた「滑鼠」(滑るネズミ) という意訳をしたわけです。

私は個人的に全て音訳にしたら便利だと思うのですが、意訳と音訳が混ざっているのが中国語の特徴です。

中国語は意訳が多いため、例えばウェブ上の機械翻訳ツールを使って、音訳された日本の外来語を中国語に翻訳しようとすると、度々変な翻訳が返ってきます。これは翻訳ツールの学習が、外来語由来の日本語と、中国語の意訳に追いついていないために発生しています。

注意点その5. 中国語の地域の違い

中国でタクシーは「出租車」ですが、台湾では「計程車」です

次に注意しないといけないのが、地域差です。中国と台湾では共に中国語が公用語ですが、異なる単語を使う場合が多々あります。

中国でタクシーは「出租車」ですが、台湾では「計程車」です。

このように中国と台湾では使う単語の種類が異なる場合が多々ありますが、ウェブ上にある翻訳ツールの多くは中国大陸でよく使われる単語をベースにしています。

お客様の中には中国向けに中国語翻訳をしたら、後は簡体字を繁体字に文字変換すれば台湾で使えると思っているお客様がいますが、誤訳が起こる場合が多いので注意が必要です。

参考:台湾華語と中国普通話の違い

注意点その6. 曖昧な表現

前回のブログ『アジア言語と、アジアの言語から日本語へ翻訳する時の注意点

で少し触れましたが、日本語は高コンテクスト(高文脈文化) です。これは要するに「空気を読む」、「言葉にしないでも察して欲しい」文化だということです。

日本語では主語が明確にされないケースや語の並びが正しくない場合が度々あります。このように曖昧な表現をしても通じるのが、高コンテクスト文化の日本語の特徴です。例えば以下をご覧ください:

  • 「高尾山に行ったことがありますか?」

この文では「あなた」が省略されています。

これに対して中国語は、語順と主語を明確化させることが非常に重要です。

もしも上記の言葉を主語抜きで中国語にそのまま翻訳をしたら、「誰に対して話しているのか?」と疑問に思われます。

興味深いのは、反対に、中国語でいう「你」にあたる「あなた」を日本語に付け加えると、少しよそよそしい感じを、聞き手に与えてしまうということです。(「あなたは高尾山に行ったことがありますか?」)

機械翻訳ツールを使って日本語を中国語に翻訳すると、主語が抜けて意味が通じない文章が出来上がる事が多々あります。ゲーム内で度々使用される砕けた表現や曖昧な表現が、翻訳ツールで訳すのが難しいというのはこういった理由からです。

注意点その7. 終助詞

終助詞とは「ね」「よ」などの表現です。例えば「大丈夫だよ」「大丈夫ですね」などです。この終助詞の中国語への翻訳がとても厄介で、終助詞がつくだけで訳文が大きく変化します。。以下をご覧ください:

  • 「佐藤さんは大丈夫ですね」(予測を込めた肯定)
  • 「佐藤さんは大丈夫です」(比較的に強い肯定)

これを中国語に翻訳すると

  • 「佐藤先生應該OK吧」
  • 「佐藤先生OK」

となります。残念ながら翻訳ツールはこの終助詞を学習しきれていないケースが非常に多いです。終助詞はビジネスなどにおけるかたい文章では見ることはあまりありませんが、漫画やゲームでは度々目にします。ゲーム内テキストの中国語への翻訳が難しい理由の一つに終助詞の存在があります。

まとめ

日本語から中国語へ翻訳をする時の注意点をまとめます

いかがでしたでしょうか?日本語から中国語へ翻訳をする時の注意点をまとめます。

  1. 中国語は孤立語なので、語順が特に重要だという点
  2. 慣用語の存在:日本語と中国語、共に独特の言い回しがある点
  3. 漢字の違い:日本語と中国語で同じ漢字ながら全く意味の異なる単語が存在する天
  4. 外来語の対応:中国語は外来語を訳すとき音訳と意訳があり、日本語の中で比較的新しい外来語を機械翻訳ツールで訳す時は間違えて訳される可能性がある点
  5. 地域の違い:同じ漢字圏の中国、台湾、香港でも、言葉の使い方が異なる点
  6. 曖昧表現:日本語は主語が抜けた曖昧な表現が多いが、中国語は主語の存在や語順が大事だという点
  7. 終助詞:日本語は終助詞によってニュアンスが微妙に変わる点

最後に統一翻訳について少しご紹介します。統一翻訳は台湾に本社を持つアジアで最大の多言語サービス企業です。50年以上の歴史と経験を持ち、これまで台湾を代表するTSMCや日本のトヨタをはじめ様々な業界の企業様に翻訳をご提供してまいりました。特に本社を置く台湾の公用語である中国語に強いのが特徴です。

近年は特にゲームの翻訳が多く、今までに 戦国 IXA といった日本のゲームの中国語翻訳を担当してきました。また、中国大手 NetEase と WeGame のゲームを日本語に翻訳してきた実績もあります。

その他、同時通訳や商品カタログの翻訳及びカタログの制作、ナレーションなどに利用する他言語の音声ファイルの納品までノンストップで対応します。過去には日本から台湾にゲーム展示会の視察で訪れたゲーム会社のスタッフの通訳も担当しています。

今後ゲーム関連の日中翻訳及びその他の商品やサービスの日中翻訳にご興味がある方は是非統一翻訳までお問い合わせください