こんにちは、統一翻訳ライターの津山です。

突然ですが、皆さんの会社では翻訳を依頼するとき、用語集を作成していますか?

用語集は以前「もう翻訳で失敗しない!翻訳依頼時に注意すべき7つのポイント」というブログでもお伝えした通り、翻訳の品質向上や表記のゆらぎ・誤訳を防止する上で、翻訳には欠かせないアイテムです。

例えば、「チャンネル(チャネル)」という言葉があります。「チャンネル」か「チャネル」、企業によって独自の判断で使い分けがされていますが、そのどちらを使用するのか曖昧な状況において、用語集があると大変便利なのです。

ですが実際に1から用語集を作ろうと思うと、どうしたらいいのかわからない…そんなお悩みを抱えている企業の翻訳担当者の方もおられるのではないでしょうか?

そこで今回は、翻訳に必要な用語集の基礎知識から作成方法と注意点まで、どなたでも5分でスッキリとわかるようにまとめました!

用語集があれば、翻訳がさらにスムーズに、高品質になること間違いなしです。用語集作成を検討中の翻訳担当者の皆様は、必見の内容です!

用語集とは

用語集とは

用語集とは、翻訳対象となる原稿の分野(業界)に合わせた「専門用語」「略語」「クライアント指定用語」などを、どのように翻訳すべきかをまとめた資料です。

用語集作成の1番の目的は翻訳品質の向上です。専門的な技術文書やゲーム翻訳など業界特有の単語が中心となるコンテンツは特に、読み手に誤解を与えず、ストレスなく訳文を読んでもらうために、用語集は欠かせません。

例えば私たちの身近な例でも、「apple」といえば、果物のリンゴと、大手IT企業がすぐに想起されるように、用語の意味は一つとは限らないケースがありますよね?

翻訳文書では、用語集がないことで発生したとみられる誤訳がたくさんあります。例えばこの観光庁東北キャンペーンサイトで「秋田(Akita)」を「tired(飽きた)」と訳したのも一つの例です。

「秋田」は「飽きた」? 観光庁東北キャンペーンサイトは誤訳だらけ

用語集を使うことで、このような意味のとり違いを防ぎ、読み手にストレスを与えない質の高い訳文を作ることができます。

用語集作成のメリット3つ

1. 品質の向上

用語集作成のメリット3つ

用語集を作成することで、複数の意味を持つ言葉や固有名詞、専門用語などの誤訳を防ぎ、翻訳品質が向上します。

以前「翻訳会社が教える!ゲーム翻訳の重要性と依頼時の重要ポイント3点」のブログでもお伝えしましたが、翻訳の質が低いと、あっという間にそのコンテンツの評価が下がります。最悪のケースでは誤訳が原因で訴訟問題にもなりかねません。

参考:誤訳から訴訟に発展した例

用語集の使用による翻訳品質の向上は、翻訳物だけでなく最終的には会社の信頼性アップにもつながるため、非常に大きなメリットがあります。

2. 作業効率向上

作業効率向上

翻訳者は通常、辞書や、一般の専門用語集を利用して翻訳作業を行います。

もし依頼時に用語集がないと、文書の背景資料を1から調べる必要があり、翻訳者の資料調査に時間がかかってしまいます。これが新しい産業や技術に関する原稿なら、なおさらです。

用語集を準備することで、翻訳原稿への理解を助け、翻訳者の作業効率向上につながります。

また翻訳プロジェクトの規模によっては、複数の翻訳者で翻訳を進めるケースがありますが、この場合も用語集を共有させることで翻訳の水準が安定し、かつ作業効率を大幅に改善することができます。

3. コスト削減

コスト削減

用語集を使い作業効率が改善すれば、コスト削減にもつながります。用語の調査や確認、検証、修正にかかる時間が不要になり、その分の翻訳コストを下げられる可能性があります。

また一度用語集を作成してしまえば、更新や修正も手軽で、依頼主と翻訳会社のやり取りに要する時間を大幅に削減できます。

これら3つの効果、品質向上、作業効率改善、コスト削減は、依頼主にとっても、用語集を準備する大きなメリットだと言えます。

用語集作成のポイント3つ

1. 用語の選定方法

用語の選定方法

用語集を作成する場合は、まず業界団体で既に利用されている対訳集や、既に業界内で翻訳済みのファイルを参考に重要な用語をピックアップします。

ここで注意点が2つあります。それは「使用頻度の高い言葉だけに注目しないこと」そして「動詞を入れないこと」です。

使用頻度が低くとも、主に社内でしか使わない特別な用語や専門用語など、依頼者にとっては常識的な用語ですが、翻訳者にとっては事前の定義付けが必要な用語もあります。これらも漏れなく用語集に掲載することが重要です。

また動詞は用語集に入れないのが無難です。動詞の対訳を固定化してしまうと、文の繋がりが不自然になり翻訳の品質を下げてしまうことがあります。

例えば日本語の「飛ぶ」は中国語だと、内容によって「飛」とも「跳」とも訳します。用語集がこれらの柔軟性を奪わないように気をつけることも大切です。

2. 文脈の説明

文脈の説明

複数の訳がある用語では、用語集でその使用場面や文脈を明確に定義しておくことが重要です。

例えば、金融業界のソフトウェアマニュアルでは、「default」という英単語は、文脈に応じて、「規定値」「初期設定」「デフォルト(債務不履行)」などと訳されます。

実際に用語集を作成する場合の簡単な例を見てみましょう。

英語日本語定義・補足
appleりんご果物ただし携帯電話についての内容では「アップル」と訳す
orangeオレンジ果物ただし色の場合は「オレンジ色」と訳す

このように文脈に合わせた訳を定義することで、翻訳者がスムーズに翻訳作業を進めることができます。これは複数人で翻訳にあたる場合の認識統一にも非常に効果的です。

また、用語集完成後は、それらの用語に重複がないか注意してください。作成後は、エクセルなどのツールで重複のチェックをすることをオススメします。

3. 用語集とスタイルガイドの整合性

用語集とスタイルガイドの整合性

用語集にリストアップする用語が決まったら、用語集の表記の統一にも気をつけましょう。例えば、この訳語ではカタカナを使うか、ひらがなを使うか、カタカナなら長音符はどうするか、半角か全角か、などです。

表記統一のためには、用語集とは別に、言葉遣いや字体のルールをまとめた「スタイルガイド」を作るのが望ましいです。日本翻訳連盟が和訳用の『JTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用)』を出していますので、こちらも参考にしてください。

最後にスタイルガイドの表記ルールと用語集の内容に矛盾がないかを確認し、用語集の完成となります。

参考:JTF日本語標準スタイルガイド(翻訳用)

2種類の用語集

翻訳で使われる用語集にはモノリンガルとマルチリンガルの2種類があります。

モノリンガル用語集は単一言語で専門用語を解説したもので、翻訳文書の理解に役立ちます。代表例は、金融関連の言葉を集めた日本取引所グループの用語集です。

参考:JPX 用語集

マルチリンガル用語集は、元言語と翻訳される言語とを、比較解説しているもので、翻訳の現場で直接活躍するのはこちらです。すでにモノリンガル用語集がある場合は、それをベースにマルチリンガル用語集を作ることも可能です。

代表例はMicrosoftや厚生労働省が出している用語集です。どちらも多言語対応しており、かつMicrosoftの方ではスタイルガイドが、厚生労働省の方では用語、定義、例文が同時に閲覧できます。

マイクロソフトのランゲージポータル

さらにMicrosoftではTBX (Term Base eXchange) 形式と呼ばれる用語データに特化した専門のファイル形式を利用しており、翻訳会社の翻訳支援ツールに用語集を直接インポートして利用できるように設計されています。

これらを参考に、自社のマルチリンガル用語集を作成してみてください。

参考:

いかがでしたか?今回は用語集の基礎知識と作成方法についてご説明しました。このブログが皆様の用語集作成のお役に立てば幸いです!

統一數位翻譯について

最後に統一翻訳について紹介します。

統一翻訳は台湾に本社を持つアジアで最大の多言語サービス企業です。50年以上の歴史と経験を持ち、これまで世界を代表するSONYやメルセデス・ベンツ、エスティローダーなど様々な業界の企業様に翻訳を提供してまいりました。

統一翻訳の対応可能言語は136言語にわたり、多言語翻訳にも対応可能です。また品質面でもISO17100やISO9001といった国際翻訳規格にも勝る高品質なTDQCMP®標準作業体制を構築しており、高品質なサービスと成果物のご提供をお約束します。

また統一翻訳では、様々な分野の原稿に対応すべく、全世界に1万人以上の翻訳者が待機しており、AIが翻訳者の専門分野や経験に基づいてお客様のニーズに最適な翻訳者を選出いたします。

さらに厳密な品質管理のもと、統一翻訳では機械翻訳を禁止しています。文化的、社会的背景も考慮した正確な翻訳文のご提供をお約束します。

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