こんにちは、統一翻訳ライターの津山です。日本の漫画は英語で「Manga」と訳されるほど世界中で翻訳されて親しまれていますが、漫画の翻訳にも高度な技術や経験が不可欠であることをご存知でしょうか?
近年、電子書籍やウェブコミックの影響で漫画の世界進出が以前より容易になり、世界の漫画市場は急速に成長しています。今や日本だけでなく、台湾、韓国からも評価の高い話題作が発表されており、今後もますます世界中で漫画翻訳のニーズが高まることが予想されます。
ですが漫画翻訳は通常の文書翻訳とは全く異なります。漫画には日常生活で使われないような言葉や表現も多く、また背景の絵とのバランスも考え、字数を考慮しなくてはいけません。つまり作品の世界観やキャラクターの特徴を維持したまま、他の言語に翻訳するには非常に高い技術が必要になるのです。
そこで今回は、漫画翻訳で必要な技術、そして漫画翻訳を依頼するときにチェックしてほしい3つのポイントを、これまで多くの言語で漫画を翻訳してきた統一翻訳がお伝えします!
今後、漫画翻訳の依頼をご検討中の皆様は、この記事で漫画の世界観を、他言語版でも維持するために必要なポイントをしっかり理解し、世界に伝わる高品質な翻訳を是非目指してください!
漫画翻訳の概要と世界の市場
まず現在、漫画翻訳の重要性がいかに高まっているかを知っていただくため、漫画翻訳の概要と現状を紹介します。
漫画翻訳の概要
漫画翻訳とは、漫画作品内に書かれたテキストを別の言語に翻訳することを指します。
漫画翻訳では、ただ単にセリフを翻訳するだけではなく、作品の世界観を維持したまま翻訳する能力や、セリフや効果音を、現地の読者が読みやすいように再配置する技術が必要です。そのため、翻訳の中でも非常に特殊で高度なテクニックが必要な分野だと言えます。
世界の漫画市場の現状
日本の有名な漫画出版社の調査によると、漫画の市場規模は2019年時点で日本国内だけで約4,400億円、海外では合計で約1,100億円に上り、ここ8年ほどで海外の市場規模は3倍以上伸びています。特に、アジアだけでなく欧米での売り上げも伸びています。
また、今注目されている韓国発のデジタルコミック「Webtoon(ウェブトゥーン)」も好調です。ウェブトゥーンとは縦型スクロールが特徴のフルカラーコミックで、市場調査会社によると2027年に世界のWebtoon市場は約1兆8,700億円規模に達すると予想されています。
つまり漫画は、紙だけでなくオンラインの世界でも広がりを見せており、今後も成長が期待できる市場だと言えます。
ちなみに世界で最も有名な漫画の一つである「ドラえもん」は、これまで世界12言語に翻訳され、17カ国で出版されています。統一翻訳が本社を構える台湾でも、当然ながら繁体字中国語版「ドラえもん」は出版されていますが、実は当初「ドラえもん」というキャラクターは「機器猫」(機械の猫)と翻訳されていました。
ですが正式に小学館とライセンス契約を結んだ後、正式名称が「哆啦A夢」(中国語発音:ドォラエーモン)へ変わりました。ドラえもん=機械の猫という翻訳は明らかに即物的すぎて、あたたかみが足りず、違和感しかありません。作品の世界観に、翻訳が影響を与えることがよくわかる例です。
漫画翻訳に高度な技術が必要な理由
漫画翻訳には、翻訳の知識だけでなく、漫画ならではの翻訳技術が求められます。ここでは漫画翻訳ならではの特徴を5つ紹介します。
特徴1 スラングや現代用語、歴史に精通する必要がある
漫画ではスラングや現代用語が頻繁に使われるため、翻訳者は漫画の原作言語、そして翻訳先の言語に対する学習が常に求められます。
また、漫画翻訳者には翻訳する漫画が持つ歴史・時代背景への理解が求められます。ベテランの翻訳者でも、現代とは異なる時代設定の漫画翻訳を行う場合は、まず資料を読み込んで時代背景を理解することから始めます。
特徴2 日本語特有のルールを適切に翻訳する技術が必要
日本語の漫画では主語を省略することがよくありますが、英語や中国語などは通常、主語を省略することができません。そのため、主語なしでも意味が伝わるように訳す高度な翻訳技術が必要です。
また例えば弊社では、日本語から中国語に翻訳するとき語尾の「ね」を反射的に「呢(ne)」と訳さないよう気をつけています。経験の浅い翻訳者は「ね」=「呢(ne)」と訳しがちですが、実際に中国語では日本語ほど呢(ne)を多用しません。筆者も台湾に住んでいますが、語尾の呢(ne)はほとんど耳にしません。
そのため現地の流行・慣習・ルールなどに合わせて原作言語を適切にローカライズすることも、高品質な漫画翻訳を行う上では、非常に重要になります。
特徴3 単行本と雑誌で翻訳する観点が違う
漫画翻訳では、ストーリー全体がわかる単行本と、先が読めない雑誌の場合では翻訳で気をつけるポイントが違います。単行本の翻訳ではネタバレしないように、雑誌の翻訳では後半のストーリーや世界観との齟齬や矛盾が起こらないように、気をつけて翻訳する必要があります。
特徴4 漫画のジャンルに合わせて、使用する用語を使い分ける技術が必要
漫画は、ジャンルやその漫画がターゲットとしている読者層・年代によって、使われる用語が変わります。例えば少年漫画のバトルシーンでは、少女漫画ではほとんど使われない罵詈雑言が出てきます。漫画翻訳者は、作品毎に異なる文体や用語等を使い分けながら、その作品が表現するモノを、適切に伝える翻訳テクニックが求められます。
例えば統一翻訳では、ギャグ漫画の場合、作品内のギャグシーンを、現地の人の笑いの感覚に合わせて翻訳します。一例として、日本語の「何!?」を翻訳する際、中国語「什麼?」を使わず、教科書では教えない「三小!?」という言葉に変えることもあります。普段はあまり使わない方がいいスラングですが、その方が「笑い」が伝わるからです。
特徴5 セリフや効果音を背景に合わせてデザインする技術が必要
日本語の漫画では、セリフは縦書きですが多くの言語は基本的に横書きのため、漫画翻訳ではセリフのフォントやサイズも調整してコマに埋め込む必要があります。
特に効果音(擬音語/擬態語)の翻訳は背景に影響を与えるため、デザインを調整するDTP(Desktop publishing、卓上出版)技術が欠かせません。
DTP(Desktop publishing、卓上出版)の内容や重要性については、こちらの記事で詳しく説明していますので参考にしてください。
漫画翻訳で翻訳会社を選ぶ3つのポイント
次に、今後、漫画翻訳を翻訳会社に依頼したいとお考えの皆様のために、漫画翻訳に精通する統一翻訳がお伝えしたい「翻訳会社に依頼するときの3つのポイント」を紹介します。
- Point1 漫画翻訳の専門家がいる
- Point2 様々なジャンル・言語の漫画翻訳経験がある
- Point3 デザイン(DTP)まで一括で対応できる
漫画翻訳には作品に対する幅広い知識、適切な用語・スタイルの選択、DTPテクニックが必要だとお伝えしました。漫画を専門としない翻訳者では、作品の世界観を壊したり、最悪の場合、訳文内で致命的なネタバレをしてしまう恐れがあります。漫画翻訳の専門家がいるかどうか、事前にしっかり翻訳会社に確認しましょう。
また漫画は、少年漫画、少女漫画、ギャグ漫画、歴史漫画、成年漫画など、ジャンルによって言葉(文体、修辞、用語など)を使い分ける必要があり、現地向けのローカライズ(現地の読者がより楽しめるよう内容の微調整や、現地の宗教上・法律上の理由での内容調整など)も必要です。そのため、翻訳会社の漫画翻訳実績は必ず確認した方がいいでしょう。
コンテンツの翻訳における、現地向けローカライズの重要性は、こちらのブログも参考にしてください。
漫画はセリフだけでなく、デザインも重要な要素です。翻訳したセリフや効果音を適切に再配置するDTPの技術を有することも非常に重要です。高品質な漫画翻訳を得るためには、セリフ翻訳からDTPまで一貫して対応できる翻訳会社に依頼するのがオススメです。
いかがでしたか?今回の記事で、漫画翻訳には非常に特殊で高度な技術が必要だということが、少しでもご理解いただけたとしたら幸いです。
台湾に本社を持つ統一翻訳は、漫画の輸出先として欠かせない台湾・中国の中国語にも精通しています。その他、タイ語、英語、日本語、韓国語、インドネシア語など多くの言語、ジャンルでの豊富な翻訳実績もございます。
また統一翻訳は、アジアの翻訳会社としてはトップの世界136種の言語に対応しており、11,000人を超える翻訳者と契約しています。よって、翻訳が必要な漫画のジャンル・言語に最適な翻訳者を手配することが可能です。
現在統一翻訳では300字の無料トライアルも実施中です。もし高品質な漫画翻訳で世界に進出したいとお考えの方は、ぜひ一度、統一翻訳にお問い合わせください!