こんにちは、統一翻訳ライターの佐藤です!
今回は、中国語の繁体字と簡体字の違いについて説明します。
近年はコロナウイルスの影響もあり、台湾に進出する日系企業は以前に比べて若干減った気がしますが、それでも台湾に進出したいニーズは未だに顕在です!
ただ、残念な事に、未だに多くの人は中国語の繁体字と簡体字の違いがわからず、ビジネスの場面において、繁体字と簡体字を混同して使っているケースを見かけます。例えば先日私は台湾でインスタグラムを見ていた所、某日系言語アプリのサービスが簡体字を使ってデジタル広告を出しているのを見ました。これでは台湾人の心を掴むことはできません。
さらに言うと、繁体字は繁体字でも、台湾の繁体字と香港の繁体字は全く異なります。同じ日本語でも関西弁と標準語は違いますよね?
繁体字中国語も、気をつけて使わないと、使用地のユーザーから「自分たち向けではない」と捉えられ、ビジネス展開が不利になることもあります。
そこで、簡体字と繁体字の成り立ちや、使われるエリア、翻訳時の注意点を中国語翻訳実績50年以上の歴史を持つ統一翻訳の事例を交えながら、ご説明したいと思います。

「簡体字」と「繁体字」の概要
最初に、「簡体字」と「繁体字」の概要をお伝えしますが、特にお伝えしたいのは、みなさんが意外と混同しがちな以下の2点です:
- 特徴、使われる地域
 - 歴史、成立過程
 
① 「簡体字」と「繁体字」の特徴と使われる地域
| 特徴 | 使われる地域 | |
|---|---|---|
| 【簡体字】 | 新字体。繁体字を簡略化し、覚えやすくした字体。 | 中国、マレーシア、シンガポール、など | 
| 【繁体字】 | 旧字体。画数が多く、伝統的な字体。 | 台湾、香港、マカオ、など | 
最初に覚えていただきたいのは、中国本土では簡体字が使われ、台湾や香港では繁体字が使われるという点です。
*ちなみに台湾の公用語は台湾語ではなく(繁体字)中国語です。「台湾語=繁体字中国語」ではありません。
② 歴史と成立過程
中国でも、元々長い歴史の中で「繁体字」が使われてきましたが、国内での幅広い普及を目的として、1956年に「漢字簡略化法案」が成立しました。この法案を契機として、簡体字中国語が正式に誕生します。
しかし台湾側からは「簡体字」は「伝統文化の破壊である」との非難が噴出し、上記の政策が及ばなかったため、現在でも台湾では「繁体字」が使用されています。
参考:台湾における「簡体字論争」 – 一国民党の「未完の文字改革」とその行方一
「簡体字」と「繁体字」の3つの違い

次に、具体的な「簡体字」と「繁体字」の違いを、一目でわかるよう3つのポイントにまとめます。
<「簡体字」と「繁体字」の違い>
- 字体
 - 固有名詞
 - 文法/発音
 
違い① 字体
| 【日本語】 | 研修 | 電話番号 | トイレ | 営業時間 | 自転車 | 
|---|---|---|---|---|---|
| 【簡体字】 | 进修 | 电话号码 | 卫生间 | 営业时间 | 自行车 | 
| 【繁体字】 | 進修 | 電話號碼 | 衛生間 | 營業時間 | 自行車 | 
上記のとおり、日本語に近い字体が「繁体字」、より簡略化された字体が「簡体字」です。
文法や発音は、基本的には同じなので、字体を変えることで、使われる地域に応じた表現が可能です。
しかし、字体を変えさえすれば、どの単語や表現も通用するかといえば、Noです。
日本語や英語、あらゆる言語がそうであるように、言語というものは、使用地の歴史や文化、使用する世代によって常に変化していきます。当然ながら、「簡体字」と「繁体字」でも、単語や表現に差異があります。それが以下の例です。
違い② 固有名詞
| 【日本語】 | 水曜日 | タクシー | イタリア | 情報 | ハードウェア | 
|---|---|---|---|---|---|
| 【簡体字】 | 周三 | 出租车 | 意大利 | 信息 | 硬件 | 
| 【繁体字】 | 星期三 | 計程車 | 義大利 | 資訊 | 硬體 | 
このように「簡体字」が使われる地域と「繁体字」が使われる地域では、字体だけではなく、単語や表現が違う場合も多くみられます。
違い③ 文法や発音
他にも「繁体字」が使われる台湾では文脈上の「有」の使用率が高い、発音記号/i/、/w/、/y/の発声の長さが長い、そり舌音(r)がほぼ無いなどの特徴があります。
さらに詳しく、台湾繁体字についてお知りになりたい方は、こちらの記事もぜひ参考にしてください。
「簡体字」と「繁体字」による方言

日本にも東北弁・関西弁・九州弁などがあるように、中国語圏にも、文字や発音が異なる「方言」があるため、注意が必要です。ここでは代表的な方言の例を説明します。
「簡体字」の方言
「簡体字」を使うエリアの方言には、北京語、広東語(広東省)、上海語などがあります。
これらは語彙が異なるだけでなく、文法にも違いがあります。
例えば過去にナインティンナインの岡村隆史さんが出演していた香港映画『無問題』(意味:問題ない)の読み方は、広東語では「モウマンタイ」ですが、北京語の「問題ない」の表記は「沒問題」で、『無問題』を、北京語で無理やり読むと、発音は「ウーウェンティ」となります。視覚上「無問題」という漢字の意味は、誰でも理解できると思いますが、ウーウェンティという音だけを聞かされた場合、中国語圏の人でも理解できません。
その他、「お先に失礼します!」という言葉は、
- 北京語では「我先走了!」ですが、
 - 広東語では「我走先了!」となります。
 
意味は一緒ですが、「先に」を意味する副詞の位置が変わってくるのです。

このように、発音や文法の違いが大きく、北京語しか話せない人は、広東語など、他の方言をほとんど理解できず、全くの別言語だと認識している人も多いです。
「繁体字」を使う方言
「繁体字」を使う台湾の方言には、台湾語(閩南語)、客家語などがあります。
台湾語は台湾の南部エリアの高齢者層や、家庭内での使用に限定されています。
台湾の高齢者の中には、台湾華語 (台湾の中国語)が話せず、台湾語のみを使用する人もいます。
さらに詳しく、台湾公用語について知りたい方はこちらの記事をチェックしてください。
また台湾と香港は「繁体字」を使う点では共通していますが、台湾では、標準語「北京語」に近い「國語」(※台湾内での呼称)が使われる一方、香港では、「粤語」(広東語)が使われています。そのため、使用している文字は同じ繁体字ですが、言葉は全然違います。
中国語翻訳を依頼する場合の注意点

かなり簡単な説明ではございましたが、簡体字と繁体字には字体以外にも多くの違いがあることが、なんとなくわかっていただけたと思います。
それでは、最後に、高品質な中国語翻訳を実現するために、翻訳依頼時に抑えておきたいポイントを、プロの目線で3つ紹介します。
<翻訳依頼時のポイント>
- 対象地域をはっきりさせる
 - 表現の違いに気をつける
 - 専門分野に詳しい翻訳者に依頼する
 
ポイント1 対象地域をはっきりさせる
中国語は地域によって使用する字体も違えば、単語や表現によって内容が異なってきます。ビジネスの場面において、「簡体字」と「繁体字」が混ざった訳文を使用するリスクは非常に高く、致命的なビジネストラブルを招きかねません。中国語の訳文として、意味は合っていたとしても、相手方からの悪い印象を払拭するのは、なかなか大変なことです。
もし中国語翻訳を、翻訳会社に依頼する場合は、まず訳文を使用する地域をはっきり指定しましょう。
ポイント2 固有名詞の違いに気をつける
固有名詞を間違えると企業のイメージを損ねたりビジネスに大きな損失を与えかねません。
間違えたらまずい固有名詞の一例をここでご紹介します。
例えば洗面所にあるハンドドライヤーは、簡体字エリアでは「幹手機」と書きます。ですが、繁体字エリアでは「幹手機」という固有名詞は絶対に使用できません。繁体字エリアでは、卑猥な意味をもってしまうため、台湾でこのような固有名詞の使い方は絶対にNGです。

多くのECサイトや企業のホームページでは、繁体字専用のチェックをしっかり行わず、簡体字から繁体字へ機械翻訳するだけに留めているため、こういった問題が残り、消費者に悪い印象を与えます。
絶対に間違えてはいけない固有名詞は、自社で用語集をしっかり用意しておくこともポイントです。用語集の内容や重要性については、こちらのブログも参考にしてください。
ポイント3 専門分野に詳しい翻訳者に依頼する
専門分野の単語に関しては、たとえプロの翻訳家でも、その分野での経験が浅い場合、気が付かない「簡体字」と「繁体字」の違いがあります。
例えば、工業技術分野における「ブロー成形」という名詞、繁体字では「吹氣成型」、簡体字では「吹塑」と表記されます。このような専門用語は、地域によって使い方が異なるため、表記や表現がしっかり統一されていないと、現場のユーザーが理解しづらく、事故の発生、作業効率の低下、企業イメージの低下といったリスクがあります。
特に専門性の高い分野は、その分野に精通した翻訳者に依頼することが重要です。
いかがでしたか?今回のブログで「簡体字」と「繁体字」には複雑な違いがあると分かっていただけたと思います。

台北に本社をかまえる弊社「統一翻訳」は、11,000人以上の世界各国の翻訳者を抱え、お客様のご希望に適う、最高の翻訳者を手配いたします。また香港、マレーシア、シンガポールなど、特定の地域で使われている中国語の翻訳実績や、閩南語、客家語、原住民の方言など、少数民族が話す言語の翻訳実績も豊富です。
統一翻訳では現在300文字の無料トライアル翻訳も実施中です。もし高品質な中国語翻訳をお求めの企業様がおられましたら、ぜひこちらからお問合せください!